混沌のグリモワール~白銀の探求者~

「きゃあっ!」

 林の中に響く少女の悲鳴。
 フレイムボールによって右足を焼かれた少女はその痛みに耐えられず、そのまま前のめりに転倒。
 遂に、逃げる足を止めてしまった。

「ふぅ、やっと追いついた。この女で間違いないか?」

「あぁ、間違いない」

 少女を見下ろす男の手には一枚の写真。その写真に写るは少女の姿。

「こんな女いったいどうしようってのかねぇ、依頼主様は」

「さぁね。でもこの子、かなりの魔力を持っているよ」

 男達はある人物の依頼によって少女を狙っていた。
 うずくまる少女に男が手を伸ばそうとしたその時――

「待て! その子から離れろ!」

 林の中に響き渡る声。声の主は男達の後方でイクシードを構えるコーラル・ケイリュオン。

「SIREN第七執行部隊所属、コーラル・ケイリュオンだ! 大人しく武器を捨てて投降しろ。そうすれば危害は加えない」

 SIRENと聞いて男達は一瞬たじろぐ……が、コーラルの姿を見て表情を変える。

「おいおい、ガキじゃねぇか。SIRENも人手不足ってかい?」

 二人のうち一人はそう言ってコーラルを笑うが、もう一人は警戒を解くことをしなかった。

「子供とはいえ凄い魔力だ。油断しない方がいい」

「はっ、油断なんかしてねぇっての。さっさと邪魔者殺して帰還すんぞ」

 懐から片方は剣を、もう片方は銃を取り出す男達。

『任務は対象の確保です。くれぐれもやりすぎないでくださいねマスター』

「わかってるよ」

 後衛を勤める男が銃から魔力弾を放つ。
 それを難なく回避するコーラル。

 しかし、魔力弾に気を取られている隙に、もう一人の男はコーラルとの距離を詰めていた。