白のアリア

チャポ…。




寒さに比例して湖も冷たいのかと思えば
そうじゃなく。




生ぬるいような感覚が、
体の全身に伝わっていく。



「…きもちいい…」



眠くなってくる。



ぼんやりとしているとフィラさんが
微笑んでこちらを見ていた。



「やはり唯様は色羽さまの
忘れ形見なのですね」



「…どうしてですか?」




「この湖は、他の人々が入ろうとすると
鋭い激痛を伴うのです。


それなのに今唯様は気持ちいい、と仰った。


あなたが特別な存在であることの
証明ですわ」



……そんな…。




「…そんなこと、ないです」



否定すると、フィラさんは
少しトーンを落として言った。




「…唯様は、そういってよく
否定されますけれど。


夢片鱗であることを、
良く思われていらっしゃらないのですか?」




「…私は、みんなが思ってるような
人間じゃないって、そう思うから…。


だから世界を救う、なんて言われても
何もいえない…。


よく理由もわからないままここに来たんだし…」




帰れる保障は、どこにもない。



でも帰れるとそう信じて、
『夢片鱗』というわずかな希望だけを持って
ここまできた。




…だけど、まだ本当に自分が
夢片鱗であるかは、わからないから。




期待が大きいほど、
なんだか余計に不安になってしまう。




「…大丈夫ですわ、唯様」



「フィラさん…?」



フィラさんは微笑んだまま私の肩に手を置いた。




「あなたは絶対に、私たちを救うために
現れた、夢片鱗ですわ。


信じてください。ね?」




今はまだ、わからないことだらけ。




なら、信じるしかない。




「…はい、フィラさん」



私もそっと、微笑み返した。