「あ、紫花!おかえりー」



「ただいま・・・!?」



目の前の彼に挨拶してから、
隣に座る少女が目に入った。



ここにはいないはずの少女。



「ちぃ、どうして唯がここに・・」


「やだなぁ、紫花!
唯じゃなくって、朔陽(サラヒ)だよ?」



「!!」



「おかえりなさい、紫花」



その言葉に返答はせずに、ちぃをじっと見つめる。



「・・・ちぃ、まさか」


「やだなぁ。別に驚くことじゃないでしょ?
『元に戻った』だけなんだから」



「・・・ですが、それじゃあ唯は・・・」


それを告げようとして、ちぃの冷たい瞳に息を呑む。


「紫花は、朔陽より唯をとるの?」



「・・いいえ」


ただ。



唯という人間が消えてしまったというその事実を、
うまく受け入れられなかった。



「・・紫花、どうしたの?
元気がないみたい」



心配そうにこちらを見上げる瞳は、黒ではなく銀。




その顔にかすかに、彼女の面影を視て。
苦く微笑んだ。



「・・そんなことないですよ。
ありがとう、朔陽」