視界は、赤しかなかった。





自分の手もまた、赤かった。





街が、家が、人が、




燃えていた。




あかあかと、燃え広がる火。




全てが火の海で
息もするのも苦しい世界で、




たったひとりそこにいた。




ただ燃えていく街を、



朽ちていく世界を、




呆然と、見ていた。





……どうして、こんなところにいるんだろう。




嘆くことはない。




悲しみもない。




なのに。




その頬に、



涙が一筋流れた。