白のアリア

「…っ、どういうことなの!?

教えて!
何か知ってるんでしょ…!?」



私の知らない、何かを……!



彼は何も言わないで静かに私を見るだけで。




「……どうしてっ…」




「……まだ、その時じゃない」



優しくほほに触れる手。
その手のぬくもりも、どこか覚えがあって。



この人を、知ってる…!



なのに、どうして何一つ思い出せないの…?



いたたまれない自分に涙が流れた。



「無理に、思い出さなくてもいい。
唯は自由に生きるべきだよ。


少なくとも俺は、そう思う」



自由に……?




「……全てを思い出した時、
唯は唯じゃなくなる。


俺の知る、真実と引き換えに」




…それは、思い出そうとすればするほど
私がなくなるって…。



そういうことなの?




戸惑う私に冴は悲しく微笑む。





「で、でもっ…」





「…みんな君が大事なんだよ、唯。


…自由に生きなさい」



そう言って大きな翼を広げる。





「…っ、冴…!!!」



去っていく姿は、
悲しげなほほ笑みは、
愁いを帯びた影は。




どこか、あの日のソルジエに似ていた。