落とされた場所は、モノクロの城だった。




一刻の猶予もないとはこのことで
到着するなり星さんは先を歩き出す。




「…あの、ここは?」



星さんは振り返ることもなく
歩き続ける。




「私たちが住む世界、
白虹【ハクニジ】です。


ここはその中心部……。
『白の館』」




…白虹……。




「あなたたちが呼んでいる、
「世界のなれの果て」とは
おそらくここのことでしょう。


全てを見通し、監視する場所……。
ここは、そのためだけに建てられたのですから」




…ここが、最果ての鴉の住みか…。




ぼうっと見ているとそこには大きな黒い鳥。





じっと見ているとやがてこちらに飛んでくる。



「ヒィッ!」




バササッ。



おびえているとその鳥は星さんの
そばに降り立つ。




「…そう。ではあまり時間はありませんね…。

仕方ない、先に行きましょう」



つぶやくと私に向き直って言った。




「先に夢片鱗を探しに行きます。
ついてきてください」



そしてまた、すたすたと歩き出す。




「あ、はいっ。
…あの、でも。


いいんですか、先に行っちゃって」




「ええ、かまいません。
いまごろまた長々と意味もない会議を
しているころですし。


上層部はきっと、夢妃さまのことでは
かけあってくれないでしょうから」



…星さん…。




「意味のない時間をすごすより、
今現在可能性のあるほうに賭けたほうが
賢明かと思われます」



冷たくて淡々とした言葉だけど。




その言葉の裏に、ソルジエと似たものを感じた。




……夢妃のこと、大切に思ってるんだな。