決戦前日------



私は今あの秘密の森で
月を眺めてのんびりとしていた。



「……」



ガサ……。




『唯』



空から現れた白銀のドラゴンは
はばたいて私のそばに降り立つ。



「スピカ。どうしたの?」



『部屋に行ったらいなかったから。
探しに来たんだ。

何をしていたんだ?』



「なんにもしてなかったよ。
ただ月を見てぼーっとしてただけ」


するとスピカは私の顔を覗きこんで



『明日の試合が、不安なのか?』



あまりに直球で聞いてくるもんだから
つい笑ってしまう。


…なんだか、小さい子供を見てるみたい。



何でも知りたがる、赤ちゃんのようで。




「…正直言うとね。

でも、みんなに特訓してもらったし!
スピカも、頑張ってたから」



私の言葉にスピカも優しく笑う。



『そのとおりだ。
心配しなくても唯なら勝てる』



「…ありがと」



サァァ……。



小さく風が湖を揺らした。



森の木々を揺らして、葉が落ちて。



その葉は私の手のひらに落ちた。