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夜。



部屋の窓を開けて、
ベランダの縁にそっと手をかける。




夜の風が、小さく頬をなでた。



「…ふぅ」




「…ため息をつくほど疲れたなら
寝ろって言っただろう」







きょろきょろと見回せば
屋根の上にソルジエ。



上るのはちょっとためらわれる傾斜だったから
ベランダに背を預けて話しかける。




「…そういう疲れた、じゃないんだよ。
なんていうか、いろいろありすぎて…。


なにから考えればいいのか、
わからなくなっちゃって…」




最果ての鴉の藍というひと、
アリア……。




「……別に、無理に考えなくても
いいんじゃないのか」




月を見たまま、何も変わらない表情で、
そういった。




「…考えても仕方のないことは、
考えなくてもいい。


いつか自然と、真実にたどり着く日は来る」




「…ソルジエ…」



思わず、私は微笑んでしまった。



…不思議。




ソルジエと話してると、
なんだかとっても心が落ち着くや。



悩んでることを話したくなってしまうような。



その悩んでることも、
なんでもないように受け止めて、流してくれる。