白のアリア

「…これで、よかったんだよね」




今はもう姿のない彼らの跡を、
白い壁の上をなぞった。




「どうして突き放すようなこと言ったの?」



ちぃが後ろから抱きつきながら聞いてくる。




私はその手を振り払い、
ふらつく体を押さえて部屋へと向かう。




「そんな体で…無理しちゃだめだよ」



ひょいっと肩を担がれ、おんぶされる。



思わぬ行動に驚き、
拒むことを忘れてしまった。




「…っ」



「ん?どうしたの?」



振り向く笑顔が本当に優しげで、
この人は、嘘をつかないのかも。



そんなことを思っていた。




「…なんでもないよ」



…だめだ、そんなこと。




相手は、私をさらった人だよ?




気持ちを振り払うように首をふり、
ぼんやりと隣を歩く紫花を見た。





「……」



なんだろう…。





……この、妙にざわざわする感じは……




「唯?どうかしましたか?」



紫花の言葉を聞く間もなく、
私の意識は途切れた。