もう、何もする気が起きない。
近所には話をするような相手もいない。一人、妻は恐怖と戦っていた。いつもより大きな音量でテレビをつけ、昼間にも関わらず電気も点けておいた。クッションを抱き、ソファに丸くなって座り耐えていた。
(あなた、早く帰ってきて。)
メールも送ってみたが、今朝の話しぶりから考えても信じてもらえていない。だからだろう、返信はなかった。
玄関のベルが鳴った。
妻は誰でもいい、一緒にいたかった。急いで玄関に向かう。そして、そこで再び恐怖に出会った。
女がいたのだ。
「な、何?」
女は何も言わずに、妻に詰め寄る。一歩、また一歩とどんどん近づいてくる。
「こ、来ないで。」
妻は言う。が、女はお構いなしだ。さっきと同じように淡々とした表情で迫って来る。
「な、何なのよ。け、警察呼ぶわよ。」
手には携帯があった。それを開き、ダイヤルを押そうとした。が、震える手が言う事を聞かない。
「いいの?本当に警察を呼ぶわよ。」
その時、妻の背中に何かがあたった。ベランダの柵だ。これ以上、後ろに下がれない。
そうなった妻に、女は今度は顔を近づけてきた。そして、見る。見る。見る。
「み、見ないで・・・。」
妻は言った。
女の表情が変わった。それは笑っているようでもあり、怒っているようでもあり、恨んでいるようでもある。さっきまでの表情が無に近かっただけに、この変化にたじろいだ。
「じゃ、死ねば?」
ただ、女はそれだけ言った。
近所には話をするような相手もいない。一人、妻は恐怖と戦っていた。いつもより大きな音量でテレビをつけ、昼間にも関わらず電気も点けておいた。クッションを抱き、ソファに丸くなって座り耐えていた。
(あなた、早く帰ってきて。)
メールも送ってみたが、今朝の話しぶりから考えても信じてもらえていない。だからだろう、返信はなかった。
玄関のベルが鳴った。
妻は誰でもいい、一緒にいたかった。急いで玄関に向かう。そして、そこで再び恐怖に出会った。
女がいたのだ。
「な、何?」
女は何も言わずに、妻に詰め寄る。一歩、また一歩とどんどん近づいてくる。
「こ、来ないで。」
妻は言う。が、女はお構いなしだ。さっきと同じように淡々とした表情で迫って来る。
「な、何なのよ。け、警察呼ぶわよ。」
手には携帯があった。それを開き、ダイヤルを押そうとした。が、震える手が言う事を聞かない。
「いいの?本当に警察を呼ぶわよ。」
その時、妻の背中に何かがあたった。ベランダの柵だ。これ以上、後ろに下がれない。
そうなった妻に、女は今度は顔を近づけてきた。そして、見る。見る。見る。
「み、見ないで・・・。」
妻は言った。
女の表情が変わった。それは笑っているようでもあり、怒っているようでもあり、恨んでいるようでもある。さっきまでの表情が無に近かっただけに、この変化にたじろいだ。
「じゃ、死ねば?」
ただ、女はそれだけ言った。


