零の狼-新撰組零番隊-

「きっさまぁあぁぁ…!」

一七夜月さんが一歩踏み出す。

今にも一足飛びに斬りかからんとしている。

それを。

「ああ…思い出した」

七種はその一言で止める。

語気もなく、気勢もない。

ただの一言で一七夜月さんの一挙手一投足を制していた。

「お前いつぞやの侠客か…ヤクザ者五十人相手にいきまいていた…あの時はすまなんだな…群れをなして襲うしか能のない愚図どもを始末するのに夢中で、お前の獲物を横取りした事に気づかなかった」

「……!」

存在にさえ気づかれていなかったというのか。

戦いに身を置く者にとって、これ以上の屈辱はない。

七種は故意に、一七夜月さんの誇りを踏みにじるような発言をしていた。