零の狼-新撰組零番隊-

三階建てのビルの屋上。

関係者以外が出入りできぬように施錠はしてあったものの、私達の前では用をなさなかった。

瞬く間に屋上まで駆け上がり、扉を蹴り開くと。

「……」

七種はまだその場に立ったままだった。

逃げる仕草も、迎え撃つ気配も見せない。

私達がこの場に辿り着くのを待っていたかのようだ。

「七種…!」

一七夜月さんが人斬り包丁を抜く。

呼吸が荒い。

無論、屋上まで駆け上がった為ではない。

極度の興奮状態。

因縁の相手である七種雲母を目の前にして、怒りを露わにしているのだ。

「俺を覚えているか、七種雲母…!」

「はて…」

中性的な端正な顔立ちに笑みを浮かべ、七種は言う。

「覚えてはおらんよ、お前如きチンピラなどな」