零の狼-新撰組零番隊-

やがて。

「……!」

私と一七夜月さんは目を見張る。

屋上の男がこちらに気づいたのだ。

段だら模様の羽織を纏う男女。

男からはどのように見えたのか…などと考える必要もない。

もしも男が威震志士の七種雲母ならば、新撰組零番隊の存在を知らぬ筈もない。

こちらの姿を見とめるなり、男の口元が更に歪んだ。

嗤っている。

『まんまとしてやったわ』

そう言わんばかりの、愉悦の表情…。