零の狼-新撰組零番隊-

現状を把握するべく、人混みから少し距離を置いて周囲を確認する。

担架で運ばれる怪我人、事情聴取を受ける目撃者、野次馬を整理する警察官。

喧騒と混乱に満ちた現場。

「こいつは…」

一七夜月さんが神妙な表情で呟く。

現場は通行量も多い、往来の真っ只中。

その道路の真ん中に、黒塗りの高級車が止まっていた。

いや、打ち捨てられていたという方が正しいかもしれない。

本皮張りのシートには、滴るほどの血痕。

フロントガラスにも、車体表面にも、夥しい鮮血が飛び散っている。

乗っていたのは対テロ関連法案を推し進めていた、ある政治家。

彼は突如襲撃してきた不審者によって車内に侵入され、警護のSPもろとも滅多斬りにされて殺害された。

周囲の野次馬の話を総合すると、そういう事のようだった。