零の狼-新撰組零番隊-

「答えろ」

六郎面さんのナイフが、一七夜月さんの喉元…その皮膚を浅く斬る。

ジワリと滲む血。

今は皮一枚で済んでいるが、もう少し、あと少し力を込めれば…。

「六郎面さん」

私は彼を制する。

「彼は…一七夜月小次郎…零番隊の新入隊士で…」

「春夏秋冬、てめぇにゃ訊いてねぇぜ?」

六郎面さんのナイフ、その刃の角度が変わる。

より鋭角に、より深く喉元に食い込む角度。

一七夜月さんは呼吸すらする事ができない。

喉仏が微かにでも動けば、研ぎ澄まされた刃が喉に食い込む。

「六郎面さん」

私はもう一度彼を制する。

「新撰組隊規、私の闘争を許さず」

「……!」

六郎面さんの動きが止まる。

新撰組隊規、通称『局中法度』。

それは隊士にとっては鉄の掟だ。

これを破る事は、躑躅森組長に粛清されると同義。

「ちっ…」

不満げに、六郎面さんは一七夜月さんを解放した。