とはいっても、私も一隊士に過ぎない。

指示を出す権限が与えられるのは、新撰組零番隊では組長補佐からだ。

任務遂行中での判断ならばともかく、任務を与えられていない段階では、隊士が自分勝手に動く事は許されていない。

「…現段階では…別命あるまで待機という事になります…」

「何だよ、命令がないと動けないのか。まるで木偶人形だな」

私の返答に、一七夜月さんはそんな事を言う。

正直腹が立った。

零番隊に入隊して日も浅いこの人が、新撰組の命令系統に対して不平を口にするとは。

先輩隊士に対する尊敬の念も、組織での行動というものも、わかっていないらしい。

言葉には出さずとも、私の表情にそれが出てしまったのだろうか。

「怒ったかい?」

例の薄笑みが一七夜月さんの顔に浮かぶ。

…小太刀の柄に手をかける。

もう一戦交えるのもやぶさかではない。

そんな心境に至った、その時。