小太刀を両手持ちに持ち替え、切っ先を男に向ける。

一定の距離を置いたまま、男は尚も棒立ち。

長ドスを握っていない右手の方で、軽く鼻先をこする。

薄笑みはまだ消えない。

…小癪。

私は突っかける!

男の足元に対して下段の刺突!

当然のように回避する男。

しかし下段の刺突は見せ技に過ぎない。

がら空きの顔面目掛けて、切っ先を跳ね上げる!

切り上げ!

決まれば顔面が真っ二つになる所だ。

が、男は超反応でこの斬撃からも逃げ切る。

僅か一寸を残し、私の小太刀の切っ先が、男の顎の輪郭をなぞった。

「……!」

声こそ上げないものの、私は息を飲む。

大した見切りだ。