『…それだけは嫌なの、千秋君』
「…へ?どうして?」
きょとんと首を傾げる王子様に溜め息が出そうになった。
……天然なのね。
『あたしがこんなのと結婚するわけないじゃない?』
「ん、そうかな?」
「うげ。想像しただけで吐きそうになった」
可愛い顔を心底気持ち悪そうに歪めるアイツ。
失礼なヤツ!!
『もういいっ!!そんな名字なんていらないもん!!じゃあね!!』
「あ、逃げたー」
逃げてないもん!!
あたしの本当の目的はおにぎりを買いに行くことだったしー!!
お腹が限界だからなんだからねー!!
そんな言葉を心の中で叫んで、中庭を全力で走り抜けたあたしでした。

