僕がはじめてエーマリリスさんの家を訪れた時だ。門をくぐったはいいけど、一向にお屋敷に着かなかった。いつまでも広い庭を歩かされた。いったい、どこまで歩くのかとリーグが聞いた時だ。
言術で泥棒除けをしているって言っていた。
エーマリリスさんが、言術をかけて普通の状態にしない限り、いつまでも庭を歩いているような幻を見せられ続ける。
永遠に辿り着けない。

今、僕に出来そうなのは、まさにこれだって思った。
「たぶん、あの言術って創る方の術だよな。だったら、きっと、僕にも出来るはず。」
思い立ったらやるしかない。僕は立ち上がった。
「広範囲に言術かけた方がいいんだよな?と言うことは、第二言を使うのか?」
やり方を聞いたわけではない。ただ、エーマリリスさんのお屋敷で見ただけだ。そんなよくわかっていない状況で、第二言を使っていいのだろうか。そんな疑問も頭を過ぎった。
「大丈夫かな?」
第二言は力こそ第一言と同じだけれど、影響する範囲はかなり大きい。第一言の失敗ですら、周りはこんな有り様なのだ。第二言で失敗したらどうなるのだろう。怖くて想像したくない。
やるか、やらないか、しばらくの間、僕は悩んだ。そう、僕は優柔不断なのだ。じいちゃんにも、リーグにも注意されたけど、こればかりはなかなか治らない。
そして、そんな優柔不断にも関わらず、僕は後先考えないところもある。
「まぁいいや。なんとか・・・なるよね。」
想いを強めた。
「lot、lot。」
万が一に備えて、力がどこまで届いたか知る必要があった。いつもなら、力が見える事なんてないけれど、今回だけはわざと色を付けてみた。大好きな緑色だ。
緑色の光が森に染み渡る。
「ここから、あそこまでだな。」
色のついた森を確認した。