今、永遠子、


「仁って……」
「へ?!あたし、言った?!」
「お…おう。」


照れくさいのか、視線を左右に泳がせながら
はにかんだ。

……やばい。顔に出る。

俺は必死にニヤケそうな顔を抑えつつ
何とか自然に微笑んだ。


「サンキュ。」


忘れられた誕生日に、最高のプレゼント。
寒くて少しセンチメンタルになる秋は
本当は嫌いだ。
でも永遠子のスイートポテトが食べられるなら
秋も悪くない……なんて。

俺って単純?


「勉強はかどってるー?!」
「「え。」」


そのとき、突然部屋に入ってきたのは
満面の笑みの――俺の母。
手には、お盆。
そしてその上に……


「「スイートポテト……。」」
「そう!今日、仁の誕生日でしょう?
永遠子ちゃんも一緒に食べましょーっ」


美味しいと評判の店のなの、と
微笑む母。
今は憎らしくて仕方がない。

……そして何故よりにもよって
スイートポテトなんだ…。


俺と永遠子は顔を見合わせ、
困ったように微笑んだ。
もうこの腹に何も入る気がしない。


「食べるか仁?!」
「え゛。永遠子マジで?」
「もったいないしーっ」


言いながら、スイートポテトに手を伸ばす永遠子。
俺も渋々、手のひらサイズのそれを取った。
……当分食べたくないな。


「いただきまーすっ」
「い…ただ、きます。」


受験まっただ中の秋。
今年は残念ながら食欲の秋になりそうです。


end.