ラップを全て剥き終わり、
あまりの大きさで一口では済まない
そのスイートポテトの端を
少し千切って口に運ぶ。

見た目とは裏腹に、
食べた瞬間甘いサツマイモと
バニラエッセンスのほのかな香りが口いっぱいに広がった。


「……ぅまい。」
「ほんとに?!」


自然に零れた感想は
永遠子の表情を輝かせた。

永遠子も俺にならって
スイートポテトを一口食べる。
すると、みるみる表情が明るくなっていく。


「おおっ!やるじゃんあたし~ぃ!」


自画自賛しつつ、もう一口二口と
いつしか二人でスイートポテトを食べていた。
確かに味は中々なのだが、
この量を一人で食べるのは流石にきついだろう。

半分近く食べたところで、
俺は率直な疑問を尋ねた。


「何で作ってくれたの?」
「え。」


きょとんとした、永遠子の表情。
別にそんな不思議なことを言ったわけではないが、
彼女は怪訝そうに俺を見つめた。

スイートポテトを食べる手を休めないまま
永遠子は俺の方を向き、
口を開く。


「だって今日、宮塚の誕生日じゃん。」


……あ。


すっかり忘れていた。
そういえば俺は秋生まれだった。
今日ようやく15歳になれたというわけだ。


「……忘れてたんだ?」
「……うん。」


素直に頷く。
ケラケラと永遠子は笑って、
案の定「馬鹿じゃん」と罵った。

別に自分の誕生日を忘れてしまうほど
忙しかったわけでもないが
勉強や永遠子のことが頭を支配していて――特に後者――なんて
彼女には言えない。


「15とか三十路半分じゃん。
 お祝いしようか。」
「しねぇよ!つか、それ傷つく。」
「あっははー!!」


気がつけば、机の上からスイートポテトは
さっぱり消えていた。