紺色のその微妙に大きな紙袋には
どこかで見たことのあるロゴが入っていた。

確か……靴のメーカー?

俺が怪訝に思い首を傾げていると
永遠子は無言でそれを俺の目の前に差し出す。
ここからは中身はまだ見えないが
やたらと大きな紙袋だった。


「え、何これ。靴?」
「ちっがうわよ、バカ。」


まぁ見て、と言わんばかりの目力に押され
俺は何も聞かないまま
袋の中を覗いた。


「わ…っ」


俺は、思わず驚きの声を漏らした。

袋の中には靴ではなく、
無造作にラップで包まれた
やたらと大きな――スイートポテトが入っていた。


……何故?


「……何でスイートポテト?
 つか、この袋、靴のメーカーの袋じゃん。」
「気にしないでよ。」


靴の入っていた袋に食べ物を入れるというのは
まぁどうかと思ったが
俺はぎこちなくその大きなスイートポテトを取り出す。

透明なラップに包まれただけの
その姿が、何故だか永遠子らしいなと思い
思わず笑った。


「…ハハッ!」
「……何で笑うの。」
「いや、でかいなーと思って。」


俺の顔面くらいありそうな大きさのそれは
一体どうやって作ったのだろうと想像した。
手作り感はもろに伝わってきたが
一応確認をしておく。


「え、これ永遠子が作ったの?」
「うん。」
「俺に?」
「うん。」


少し照れくさそうにはにかんだ彼女に
またもや俺は首を傾げた。
永遠子が俺に何かをくれるなんて、本当に久しぶりだ。
しかし何故突然?
そして何故スイートポテト?
確かに俺はスイートポテトが大好物ではあるが。

何か欲しいものでもあるのかと
思わず疑ってしまった。


「怪しんでないでさっさと食べなさいよっ!」
「や、怪しんでないです!!食べます!!」


慎重に、何重にも巻かれたラップをはがしていく。
お世辞でも綺麗とは言えない形だが
永遠子が俺に作ってくれたという事実だけで
もう何でも食べられると思った。