「あ゛ーも゛ー無理っ!」
「あ、さっきの俺とデジャヴ。」
「デジャヴじゃない!!」


数分後、今度は永遠子が音を上げた。
さっきの俺と同じように
こたつの毛布を肩までかけて縮こまっている。
俺もつられて、ペンを置いた。


「……解きなよ。」
「……無理。」
「ったく……。」


お互い同じ姿勢のままピクリとも動かず、
憎まれ口ばかり叩く。

俺も永遠子も大して頭のいい方ではないので
勉強に耐え抜いた脳はもう限界だった。

……まぁ、俺の勉強が進まないのは
目の前の彼女ばかり見ているからだが。
恋ってものは、自覚すると本当に恐ろしい。


「「はぁ~~……。」」
「ハモッた。」
「ハモんないでよ。」


同時に溜め息を吐いて、
ほぼ同時に窓の外を見やる。
共にいる時間が長いせいか、
最近の俺と永遠子のシンクロ率は中々に凄い。

外は風がキツイのか
朱色に染まった紅葉が、無数に宙に舞っていた。


「綺麗だね。」
「寒そうだな。」
「現実的なこと言わないでよ。」
「……最近の永遠子、厳しい。」


俺がそう拗ねたように言うと、
永遠子は昔からよ、と笑った。

それからは何故かお互いに口を開かなくて、
時計の針の音ばかりが部屋に響く。


しかし


『ぐうぅ~~……』
 

何とも情けなく切ない音が、静かだった部屋に溢れた。

……大失態。
俺、何て格好悪いんだ。


「ブハッ!!今の音、切なー!!」
「うるせぇ……。」


腹の音さえ堪え切れなかった自分に赤面。
対する永遠子は、腹を抱えて爆笑している。


しばらくしてようやく笑いが治まった様子の永遠子が
あっ、と小さく声を漏らして
おもむろに鞄の中から何かを取り出した。

こたつの机の上に置かれたのは、
一つの紙袋。