「でも、さ。サイズとか知らねーんだよなー。」
「は?!入らなかったら意味ないじゃん!」
「う゛…。」


もー、と口を尖らせて
永遠子は指輪がピッタリとはまる指を探す。

本当のサイズは知らないとはいえ
細い彼女の指に合いそうなものを
選んだつもりだ。


指一本一本にはめていく永遠子の手を
俺は緊張した面持ちで見つめる。


「あ、ぴったり。」


彼女がそう言ったのは、
まぁなんと右手の薬指で。

左の薬指じゃなかったのは
よかったような残念なような……。


しかし右手の薬指で光るその指輪を
永遠子は夜空に掲げて、
まるで子供のように見つめた。


本当に、下の二人が見ていなくて
よかったと思う。


「……何言われるか分かったもんじゃねーよ…。」
「へ?何か言った?」
「いや、何にも!……指輪、はまってよかった。」


話をそらすように俺は視線を
空に掲げられた指輪に向けた。

永遠子は怪訝そうな顔をしたものの
俺のその言葉にえへへーと笑って
大きく頷いてくれる。


「……ありがと。」
「懐かしいだろ?」
「うん。」


珍しく素直。

そんな彼女に見えないように微笑んで
はぁ…と小さく幸せの溜め息を吐いた。


「また、やるよ。」
「何を?」
「指輪。」


今度は、本物を。

その言葉はやはり飲み込んでしまったが
永遠子は読み取ってくれたのか
うん、と笑って頷いた。


「兄ちゃん、姉ちゃん!」
「おいしかったー!」


雰囲気を遮るような甲高い声。
俺は今度は疲れた溜め息を吐くと
二人に笑いかける。


「じゃ、そろそろ帰るかー」
「「えーっ!!やだー!!」」
「宮塚!最後にかき氷買え!!」
「もー無理!!」


”似合ってる”の一言も言えなかったけれど
指にはめた彼女の姿は、
とても嬉しそうで輝いていて。


それだけで俺の体温は
この熱帯夜に負けないくらい上昇中。


end.