俺もその後を追って、
ごった返す人混みをかき分けて走る。

屋台の前に着くと、既にチビ二人は
薄い紙の貼られた網を握って
目をキラキラと輝かせている。


「あ、宮塚ー。ね、ちょっと来て。」
「は…?」


水槽で輝く金魚に夢中な二人は放って、
永遠子に手を引かれた俺は
抵抗もせずに彼女についていった。

……チビ、置いていっていいのかよ。

と、少しだけ心配にもなったが
手を引かれて行った先はすぐ隣の屋台だったので
心の中で小さく安堵を漏らした。


「って……アクセサリー屋?」
「そ。まーおもちゃだけどねー。
 懐かしいなーなんて思って。」
「あーそうだよな。」


小さい頃に永遠子と一緒に来たとき
よく二人でお揃いで買ったりしていた。

店の主人は変わってしまったが、
キラキラと光るシルバーのアクセサリーに
懐かしさが戻ってくる。


俺と同じことを思っているのか、
永遠子も懐かしそうに目を細めていた。

それを横目でさり気なく見ながら、
彼女の方を見ずに言う。


「…何か、欲しいもんでもあるのか?」


久しぶりなので、恥ずかしさに顔が見られない。
チラリと視線だけを向けると、
彼女はポカンと口を開けていた。

そんな顔することなくないか?


「あははっ!もー子供じゃないんだしさぁ
 懐かしかっただけだよ!」
「そっか。」
「宮塚こそ欲しかったりするんじゃ~?」
「ははっ!まっさかー」


大袈裟とまで顔の前で手を振る永遠子は
そのまま笑って、金魚すくいの屋台へ行ってしまった。

残された俺は、ただ一人
妹と弟と笑い合う彼女の横顔を見て、
もう一度アクセサリーの並ぶ台に視線を戻す。


さっき、永遠子がじっ…と見ていた
シンプルな指輪が目に入った。


「…アイツ、素直じゃねぇからなー。」


俺は小さくそう呟いて、
その指輪を手にした。