――エルはロボットだ

全てが機械仕掛けでできた”物”という存在。

本来なら、感情も何もかも――…
分かりやしないはずなんだ


なのに。

私の中で、何度も繰り返されるエルの一言。
彼にとってのその感情は、一体なに――…?


「え……?どういう意味…?」


怪訝な顔で聞き返すも、
その声には動揺の色が出ているのが
自分でも分かった。

けれどエルは口先に人差し指を当てて、
んーとねと呟く。


「僕にもよく分かんない。
ただ、瀬那がそばにいると――」
「うん…。」
「それだけで幸せっていうか、何か僕が落ち着かなくなる。」


変だよね、と困った風に笑うエルと
対照的に呆然と彼を見つめる私。

エル自身が、その気持ちの意味を
全くと言っていいほど理解していないようだが
それでも、これらの彼の一言が嘘や
勘違いなどではないようにと
心から願う自分がいた。


「瀬那が他の子と喋ってたら何かイライラ…?ってなるし
 瀬那と喋ってるだけで凄く楽しい。」
「それは……何だか、家族以外の気持ちっていうか…
 もーよく分かんないんだよっ!」


身振り手振りで、この感情を表現しようとするエルに
私はクスッ、と笑って
少し意地悪に言う。


「エルは……そんな気持ちになったとき、
 私のことが嫌いになるの?」


そう私が問うと、エルはバッとこちらに振り向いて
ブンブン首を振った。


「そんなわけないじゃん!むしろ大好きだよっ!
 でも、その大好きが……
家族じゃなくてもっと他のものなんだぁ……。」


――あぁ、憎らしい


もし彼がロボットなんかじゃなかったら
彼も私も、こんなじれったい思いしなくてすんだのに。

エル自身も、そんな自分がもどかしいようで
さっきから落ち着きがない。


「だからそう…つまり……瀬那のこと、
大大だーい好きってこと!!!」