ガチャリ、


広い玄関ホールに扉の閉まる音だけが
虚しく、静かに響く。
小さく灯った光だけが、私の足元を照らす。
電気も点けずに家へと上がって、
靴を脱ぎ散らかしたまま奥へと進む。


私は、小さく小さく――”ただいま”と呟いた。



「……。」

リビングの灯りを点けても、
無駄に広い部屋が広がるだけで何の音もしない。
部屋中を見渡しても、人の姿すら見当たらない。

こんなことは日常だけれど。
それでも、この静まり返った家に帰ってくるたび
心の中に感じる空虚。


この家には、私を”おかえり”と
迎えてくれる人すらいない 。



ドサッ

3人掛けのソファに身を投げ出す。
体が埋まるくらい、フワフワのソファ。
その他にも、子供の私が見ても高いと分かる家具。

みんなそれぞれ役割があるのに、
私だけ必要とされていないゴミのようだ。


――なんて…最近ときどき思う。


私の名前は安曇瀬那(アヅミ セナ)。
趣味は発明。
友達は――いない。

両親はあまりよく知らないけれど、
世間――というか世界的に注目された科学者だそうだ。
だから、こんな腹が立つほど豪華な家に住んでるし
私の趣味も発明なんだと思う。


でもいつも家にいない。
私が必要としても、電話も、
メールもほとんど繋がらない。

正直、寂しさは感じても
必要性が感じられなかった。