自分勝手な私の涙は、
その消え入りそうな言葉を聞いた途端
ピタッ、と止まった。


今、何て?


間抜けに見つめる私の瞳と、
夜久くんの手の隙間から見える瞳が交錯する。

周りの街頭や車のライトで照らされた私たちは
お互いにすごく赤い顔をしていた。


「だぁー…っ、もう…」
「え、えっ?」


彼の両手は顔から離れ、
ゆっくりと私の方へ近づいてくる。

そして、私の頬を優しく包み込むように
手を添えると、
親指で頬に残った涙の跡を拭ってくれた。


「何でさ、先に言うんだよ。」


開いた口が、塞がらない。

どうしよう。こんな間抜けな顔
いつまでも見せられないよ――…

呆然と立ち尽くす私はよそに、
夜久くんは私から目線を外して俯くと、
再度頭を掻いた。


「そのために今日、誘ったのに。」


え、


「紗代ちゃんたちにも協力してもらったんだよ。
 ずっと俺、相談してたんだ。」


え?

それって――つまり、どういうこと?
夜久君も……彼氏くんに相談してたの…?


何も返せない私に追い打ちをかけるように
夜久くんは、私の目を見つめて言った。


「見てくれてたの、知ってた。」

「試合で勝った時も、いつも喜んでくれてて」

「俺……すっげー嬉しかった。」


嘘…。

嘘嘘嘘。

本当に夜久くんが言ってるの?
からかってるの?冗談なの?


「俺、色んな奴に聞きまくったんだぜ?」

”あの子は誰だ”って。


――あぁ、

私たち……同じことをしてたんだね。


夜久くんはそう言って、
本当に幸せそうに笑った。


「見ててくれて、ありがとう。」


「俺も好きだよ。」


夢じゃ――ないよね?