彼は彼女を愛しすぎていた。


だからなのかもしれない。
今、こんなに胸騒ぎがするのは。


「はぁっ…!はぁ…!」


苦しい。
走る足を前に出すたびに息が詰まる。
しかし止まるわけにはいかない。

止まっては、いけない。


一刻も早く、彼の元へいかなければならない。


さっきの電話の内容が、
俺の頭の中でフラッシュバックする。


『美奈が死んだ』


――嘘だろう?


彼女が、美奈が、


死んだ――?


「はっ…はぁ…!」


俺は走る。

彼までの道を、全速力で駆け抜ける。


俺の心の中は、
不安ばかりが支配していた。


「…綾太…っ」


幸せそうだった、彼の笑顔が浮かぶ。
嫌な予感ばかりが、過る。


あの二人は、離れてはいけない。
離れるべきではない。


「綾太ぁっ!!」