口元を押さえたまま、
携帯をギュッと握り締める。


「じゃあ、また明日ね!!」


そう言い残し、何か言いかけた莉奈の声も断ち切って
私は電源ボタンを押した。
ブツッ、と無機質な音が響いて
辺りはまるで一気に静まり返る。


「ひっ、っ…く」


泣いてちゃ意味がない。

私は俊くんを諦めるために、
莉奈との仲を取り戻すために、

祐唯を心から――好きになるためにしたことなのに。


なのにどうして涙が出るんだろう。


「…っ」


莉奈じゃなければ。
彼女が親友なんかじゃなかったら。

きっともっと楽に私は憎むことができた。

すんなりと俊くんのことだって奪えたのに。


「うぅっ…!」


――あぁどうか、

明日になったら何もかもが元通りでありますように。

幸せで、みんなが望む明日がきますように。



もう諦めた、断ち切ったはずの感情が
胸をキリキリと苦しめる。

このときから止まったままの私の心は
これからもずっと、この愛を叫び続けるだろう。



「わあぁぁああん…っ!!」



心の奥底で、この涙が溢れるまで。


end.