その続きなんて、聞かなくても分かった。
莉奈がどれほど俊くんのことが好きだったかなんて
あの涙を見れば分かる。


「莉奈。」
『…ゆ、ず…』


さきほどまでの勢いはなく、
弱々しい彼女の様子は、電話越しでも伝わってきた。


「俊くんと、やり直そ?」


――私、もう好きじゃないんだ。

――まぁ昔から好きでもなかったけどね。

――莉奈の悲しむ顔は、やっぱり似合わないよ。


「だから、だから……っ」


そこまで一気に捲し立てた私は、
気がつけばボロボロと涙を流していた。
それが莉奈にバレないよう、必死で溢れそうな嗚咽を抑える。

無理やりに顔に笑みを浮かべて
あはは、と空笑いが起こった。


『柚子……』


きっと彼女は気づいてる。

私は嘘が下手だから、気持ちなんてすぐに見透かされてしまう。
だからどうしても会って話なんて出来そうにもなくて。


「電話で、ごめんね。」


ううん、と返事はすぐに返ってきた。
莉奈は何で何でと繰り返す。


『だって、柚子は…!』
「違うよ。」
『嘘つかないでよ!』
「違うってば!!」


嗚咽を聞かないで。
私に遠慮なんてしないで。

つい荒くなる莉奈の声に対抗するように
私の声も叫び声のように大きくなる。
これでは埒があかないと思った私は、
まだ何か言いたげな電話に叫んだ。


「諦めるとか莉奈らしくない!!」

「もしそんなことしたら……」


”絶交するから”


そう続けようとしたのに、ついその言葉は引っ込んでしまった。