まだ入社して間もない私、何も知らない私、失敗の連続だった私。そんな私に営業、設計、現場員誰からも仕事が廻って来るハズもなかった。みんな仕事に慣れ失敗をしない先輩事務員に仕事を頼んでいた。
私は手持ち無沙汰だった。いつ給料泥棒と言われるのかビクビクしていた。
「私やります。」
沢山の書類をコピーしていた営業マンに思い切って話かけた。
「あっ、大丈夫。」
あっさり断られ自分の席へと戻る途中、さっきの営業マンが先輩事務員の坂本さんに
「ごめん!大事な書類なんだ。失敗しちゃマズいから慎重にやってくれる?」
頼んでいた。えっ?私じゃ不安って事なんだ…。坂本さんは
「私忙しいんですけど…」
といいながらこっちをチラリと見た。あなたコピーもまともに頼めないのと言わんばかりの眼差しで。
私はとぼとぼ自分のデスクにたどり着いた。その時後ろから声がした。
「見積書書いてもらえる?」
初めて仕事を依頼された。しかもコピーなんかよりずっと重みのある仕事を…
振り返るとそこには松木課長が立っていた。
「あ、あのぅ…私ですか?」
とっさに尋ねた。
「そうだけど忙しい?」
嬉しかった。初の仕事の依頼が来た事が…。その課長こそが後にダーリンとなるたくちんだった。