そう思っているうちに、 梓は保健室を出ていこうとする。 「ま、待って!」 その声はもう、届いていなかった。 「……梓」 今度は文字通り、 独りだけの保健室。 独特の香りに包まれながら、 わたしはだらりとしゃがみこんだ。 梓には、水稀がいる。 なのにどうして、 「気をつけろ」なんて忠告しただろう? 分からない。 梓の心が分からない。