「ていうか西野くん!」

桃ちゃんが言った。

彼女の声は、いつ聞いても愛らしい。
羨ましいくらい。


「あ?」

「しーちゃんに挨拶は?」

ドキッ。

二人の会話を茫然と見ていただけだから、
突然自分の名前が出て驚いた。


「も、桃ちゃん」

桃ちゃん、何言い出すのよ…。


「挨拶出来ないのー?」

そんなわたしをよそに、
桃ちゃんはフフンと鼻を鳴らして言う。



梓は、というと、
黙ってわたしたちを見ていた。

訂正。
わたしたち、じゃなくて桃ちゃんを。


梓はわたしと目を合わせてくれないから。