「朽木さ――――――んっ!!」
 
 
 刹那、フェンスの向こうにいた筈の朽木さんの姿が消えた。
 
 と思ったら、次の瞬間、駐車場の入り口から現れた朽木さんが、あたし達に向かって駆け寄ってきたのだ。
 
 加速装置でもついてるんか!?
 
 あっという間に合流するあたし達。
 
「グリコっ!」
 
 祥子と真昼を後ろに庇い、立ちはだかる朽木さんの横に並び、あたしは男達に向き直った。
 
「あいつら、祥子と真昼に乱暴した!」
 
 向かってくる男達は、あたしの噛み付きそうな様子と朽木さんの迫力に呑まれてか、反射的に足を止めた。
 
「うちの連れが、何か?」
 
 ずいっと一歩前に出て凄む朽木さん。
 グラサンかけてるから多分怖いと思う。
 
 あたしは無言で朽木さんのパーカーのポケットを叩く。
 
 朽木さんは同じく無言でそこから携帯電話を取り出し、あたしに渡してくれた。
 
「しつこいとケーサツ呼びます」
 
 視線は男達を睨んだまま。
 キーに指をかけるあたし。
 
「うっ……」
 
 雑魚チンピラ達は怯みながら一歩下がった。
 
 そして。
 
 しばしあたし達とチンピラ達の睨み合いが続き。
 
 やがて何事かと通りを行き交う人達が足を止め、人だかりができ始め。
 
 
「……チッ」
 
 男達は悔しそうに吐き捨てると、体の向きを変えて去って行ったのだった。
 
 
「………………ほーっ……」
 
 安堵と共に、どっと疲労感が押し寄せてきて、あたしは深々とため息をついた。
 
「度胸だけは一人前だな」
 
 くしゃっと頭を撫でられる。
 誰かなんて考えるまでもない。
 
「うん、ハッタリ得意だから」
 
 あたしを見下ろす朽木さんを見上げ、にやっと笑って言い返した。