「は、拝島のやつか!? あのお喋り野郎!」
 
「いえ、高地さんって、近隣大学でも結構有名ですから。色々、噂を耳にしてますよ。もう伝説になってます」
 
 と真昼。
 
「えっ、そうなんだ!? 二人とも、高地さんのこと噂で知ってたんだ!?」
 
 そいつはびっくり。初耳デスヨ!
 
「まぁちょっとだけね。知り合いの子がナンパされたからどんな人かは聞いてたのよ」
 
 祥子が言うと、
 
「あたしも高地さん主催の合コンに友人づてで何回か誘われたから。全部断ったけど。
合コンしまくってるから知り合いが多いんですよね? 高地さん」
 
 真昼も笑顔で容赦なく追撃する。
 
 最早戦いは一方的なものと化していた。
 
 地雷だらけの敵陣地で、迎え撃つ敵の集中砲火を浴びた突撃兵といったところの高地さん。
 
 ひくひくっと笑みを引きつらせて硬直しっぱなし。
 
「グリコちゃん……」
 
 いやあたしにそんな救いを求めるような目を向けられても……。お笑いキャラのよしみってやつ?
 
「えーと……そろそろお昼ごはんにします?」
 
 とりあえず適当に話題を提供してみると。
 
「そっ、そうそう! そろそろお昼ごはんだよね! うん、腹ぺこぺこだよオレ! よしっ、みんな、岸にあがろうぜ!」
 
 動揺を隠しきれてない滅茶苦茶不自然な様子で、高地さんは岸に猛ダッシュして行った。
 
 ……いや泳いでるから猛スクロールか? 半魚人並みの速さだ。
 
 後に残されたあたし達三人。
 
 しばし唖然とその背中を見送り。
 
 
『……ダメだこりゃ』
 
 三人同時に呟いた。