「ここに置くよ」
横から響いたドサッという音に、俺は意識を掴まれ、はっと我に返った。
拝島が、ビーチパラソルを砂に差し込んだところだった。
「あ、ああ……」
まだ胸にくすぶる昏い欲望を押さえ込んで頷いた。
頭を冷やすため、買ってきたばかりのスポーツ飲料のペットボトルを開けて、中身を口に含む。
冷えた液体が体に浸透し、中の熱を奪っていった。
「……ところで、高地は何してるの?」
不意に拝島が、俺の横に目線をずらして言った。
俺は完全無視してたのだが、にわかにその存在を思い出し、拝島に続いてそちらを見やった。
真っ赤な顔でひたすら妙な作業に没頭する高地がそこにいた。
「見ての通り、なにやら膨らまそうとしてるみたいだな」
半ば呆れて言う。
そう。高地は持参してきたらしいマットのような物に、息を吹き込むのに必死だったのだ。
「ぷはぁーっ! はぁ、はぁ。ゴム、ボート。だよ」
見てると給気用の孔から口を離した高地が、苦しげに教えてくれた。
「普通、そういうの、ポンプとか使うもんじゃない?」
「だって、はぁ、はぁ。わすれ、ちまった」
「なら諦めればいいだろ。それ以上続けると酸欠と日射病で倒れるぞ」
「いやだ! ラブラブボート作戦なんだ!」
急に元気になった高地が断固主張する。
そのネーミングセンスも問題だが、真の問題は、誰がこのボートに、高地と二人で乗ってくれるか、だ。
徒労に終わることは目に見えていた。
「……拝島。好きにさせてやろう」
本音は「勝手にやってろ」だ。
そこへ。
「おまたでーす!」
元気のいいグリコの声が聞こえてきた。
「おおっ! 待ってましたーっ!」
高地が空気入れを中断し、飛び上がる。
俺と拝島も向き直って三人を迎えた。
横から響いたドサッという音に、俺は意識を掴まれ、はっと我に返った。
拝島が、ビーチパラソルを砂に差し込んだところだった。
「あ、ああ……」
まだ胸にくすぶる昏い欲望を押さえ込んで頷いた。
頭を冷やすため、買ってきたばかりのスポーツ飲料のペットボトルを開けて、中身を口に含む。
冷えた液体が体に浸透し、中の熱を奪っていった。
「……ところで、高地は何してるの?」
不意に拝島が、俺の横に目線をずらして言った。
俺は完全無視してたのだが、にわかにその存在を思い出し、拝島に続いてそちらを見やった。
真っ赤な顔でひたすら妙な作業に没頭する高地がそこにいた。
「見ての通り、なにやら膨らまそうとしてるみたいだな」
半ば呆れて言う。
そう。高地は持参してきたらしいマットのような物に、息を吹き込むのに必死だったのだ。
「ぷはぁーっ! はぁ、はぁ。ゴム、ボート。だよ」
見てると給気用の孔から口を離した高地が、苦しげに教えてくれた。
「普通、そういうの、ポンプとか使うもんじゃない?」
「だって、はぁ、はぁ。わすれ、ちまった」
「なら諦めればいいだろ。それ以上続けると酸欠と日射病で倒れるぞ」
「いやだ! ラブラブボート作戦なんだ!」
急に元気になった高地が断固主張する。
そのネーミングセンスも問題だが、真の問題は、誰がこのボートに、高地と二人で乗ってくれるか、だ。
徒労に終わることは目に見えていた。
「……拝島。好きにさせてやろう」
本音は「勝手にやってろ」だ。
そこへ。
「おまたでーす!」
元気のいいグリコの声が聞こえてきた。
「おおっ! 待ってましたーっ!」
高地が空気入れを中断し、飛び上がる。
俺と拝島も向き直って三人を迎えた。

