「で、何か用なの?」
 
 拝島が尋ねると、高地は思い出したように身を乗り出してきた。
 
「そうそう! お前、車買ったんだってな!」
 
「ああ、そのことか。うん、買ったよ。中古のミニ」
 
「もう納車したのか?」
 
「納車は今週末だけど……なんで?」
 
「初ドライブで海に行かないか!?」
 
 高地は勢い良く言った。
 それを聞いた瞬間、俺は内心眉をひそめた。
 
「海……? 高地と二人で?」
 
 そんなわけはない。俺はとっくに高地の目的を見抜いていた。
 
「なんで男二人で海行かなきゃなんねぇんだよ! 俺と拝島と朽木の三人とさ、女の子も誘ってさ、海水浴に行くんだよ!」
 
 やっぱり女目当てか。
 
 俺は深々とため息をついた。
 
 高地は無類の女好きで知られている。女の匂いを嗅ぎつければどんなイベントにも首を突っ込んでくるとか。
 
 そして大抵は口説きに失敗してこっぴどく振られるというオチがつくのも有名な話だ。
 
「俺も朽木もそういうの苦手だよ。海は他の奴と行きなよ」
 
 拝島が俺に気を遣ってくれた。
 
 これは……正直嬉しい。
 
「拝島と朽木だから女がついてくるんだろ! 俺の誘いじゃ女の子が釣れないんだよ!」
 
 もう少し建前を作るとかできないのかこいつは。あまりにもあけすけすぎる。
 
「な、頼むよ、友達だろ! 初ドライブにみんなでわいわい海行くのも最高じゃねぇか! ひと夏の思い出だよ! 
 太陽だよ! 
 スイカだよ! 
 水着だよ!」
 
 お前の目的は最後のひとつだけだろうが。
 
「悪いけど高地……」
 
 俺はきっぱり断って追い返そうと口を開いた。
 
 が。