さて、そんなわけで、中古カーショップにやってきたあたし達。
 
 車に興味のないあたしにはもちろん初めての場所。
 
 想像してたのは、映画のワンシーンでよく見る一面ガラス張りのショールーム。モダンで広々とした室内にでんと置かれたピカピカの車。スーツ姿の男性。
 
 確かディーラーとかいうんだっけ?
 
 興味がないどころか車オンチのあたしにはディーラーってのが何なのかもよく分からないけど。
 
 まぁそれは置いといて、そんなあたしの想像は180度覆された。
 
 巨大な倉庫のような建物に、洒落っ気の欠片もないごちゃっとした店内。所狭しとぎゅうぎゅう詰めにされた何十台もの車。照明はどこか薄暗く、通路は狭く、なんとなく息苦しい。
 
 どう見てもショールームには見えない。
 
「ここって、車作ってる工場ですか?」
 
 物珍しげに辺りをきょろきょろ見回して言うあたしに、
 
「いや、ちゃんとした店だよ。結構大きなチェーン店」
 
 拝島さんが優しくカーショップについて解説してくれる。
 
 その話によると、ここは大量の中古車を取り扱う、安さが売りの中古屋さんらしい。回転が早いので色んな車が見れるんだとか。
 
 あたしは車のボディに触りながら「ふ~ん」と適当に相槌を打って見せた。
 
 それから拝島さんは、とある車の前まで来ると「朽木! これなんてどうかな?」と朽木さんを呼び、二人は車の話題に没頭しだした。
 
 拝島さんは朽木さんと肩を並べて狭い店内を歩き、あの車はどうだのこの車はこうだの語り、朽木さんはその話一つ一つに「あれはちょっと高いな」だの「これは車検が……」だのと返す。
 
 なんか、男の人の世界、って感じだ。
 
 やや疎外感を感じるけど、もともとこの二人を観賞するためについて来たのだ。ここは一歩退いたところから堪能させてもらおう。
 
 あたしは二人の周囲をこっそり回り、にやつく頬を押えながら眺め回した。