それは、桃子にとって初めての恋。
普通の恋のはずだった。
彼は幼なじみでも同級生、先輩でもない。
桃子とは違う高校に通う高校三年生。
夏休みが終わり、
二学期が始まって直ぐの土曜日。
友達の佐紀との約束で遊園地へ
だけど桃子は、
約束の時間を一時間
間違えていた。
佐紀からの《もう着いた?》
このメールで間違えに気がついた。
慌てて返信『ごめん今から出る』
家から歩いて5分程の駅に走った。
いつもなら普通電車に乗るのだが
急行電車に飛び乗った。
約束の場所は三つ先の駅。
急行に乗ろうが普通に乗ろうが、
三つ先なので大して変わらないが、
佐紀に悪いと言う気持ちと焦りから
急行に飛び乗った。
飛び乗ったは良いが、
車内で人にぶつかった。
ぶつかった。
いやっ、弾き飛ばされた。
桃子は倒れそうになったが
桃子を支える手が
桃子は手の主を見た。
かなり背の高い同年代の男性。
桃子は頭を下げた。
声を出さなかったが
お礼のつもりだった。
恥ずかしくて声が出なかった。
桃子の顔は真っ赤だった。
もう一度頭を下げ、逃げる様に
隣の車輌へ小走りに移動した。