「大丈夫よ。お守り係も用意してあるし」
お守り係って…それも男でしょうが。
「でっでも!星燐って私立だし!払えないです!」
私は奥の手を使う。
もともと、県下トップの高校に行かれなかったのは私立だからで、つまりこの言葉は嘘ではない。
「大丈夫よ。特待生扱いで奨学金をあげるから」
……完敗。
ここまで言われると、私は断れなくなった。
もともと、高校落ちてどうしようか迷ってたところだし。
「……わかりました」
「そういうと思ってたわ。じゃあ行くわよ」
理事長さんは私を引っ張って、校門前に止められた外車のほうに向かう。
「え…今から行くんですか!?私、一回家帰らないと、」
「細かい子ねえ。大丈夫、もう親御さんには了承得てあるから」
はやっ。
私が断ったらどうするつもりだったんだろう。
ふかふかのシートにもたれて、学校に向かう。
一回ピンチに陥って、一見助かったみたいだけど、これからもっとひどいピンチに陥る。
なぜだか、そんな予感がした。