女教師

「あなたの子どもよ。私とあなたの。だから産むの。心配しないで。私は大丈夫だから。どこへ行ってもずっとあなたのことを思って生きていく。だからあなたも早くここを出て新しい人生やりなおしてね。私のために自分の人生を壊して欲しくないの。だからお願い、夢を叶えて。それが私の夢になるから。いつかあなたを見れる日がくるよね。それまでお互い頑張ろうね。」
私は最後は泣きながら喋っていた。そんな感覚は全くなかったが全身で彼に伝えたら自然に流れてしまっていた。
「おい、待てよ!そんな大事なこと勝手に決めるな。おい!ふざけんな。俺が出るまでなんで待てねんだよ!」
彼はガラスをバンバンと叩いた。警官が彼を取り押さえる。たかがガラス一枚の壁を乗り越えることができなかった私たちだったがとても幸せな日々を過ごせたと私は思う。遠ざかっていく彼のことを私はいつまでも見守っていた。
「愛してる、東。」
それまで暴れていた彼は警官に取り押さえられたまま身動き一つしなくなった。彼の瞳から涙が一雫こぼれた。
「先生、俺は必ず迎えにいく。夢を叶えて。そして3人で死ぬまで暮らそう。必ず…。」
そう、笑って彼は私をまっすぐに見つめた。私はうなづき、決心したように彼を後にした。

―5年後―
「お母さーん!!」
わが子が駆けてくる。私は両手いっぱいにその子を抱きかかえた。
「おかえり。拓麻。」
「今日ね、パパの絵を描いたの。見てー。」
小さな手で拓麻はその丸まった画用紙を広げた。父親に会ったことすらないのになぜ、拓麻は絵を描けたのだろう。きっと一生懸命創造して描いたのだと思うと私の胸ははりさけそうになった。だが父親がいないというハンデをおってはいるが私はそれなりに拓麻に愛情を与えている、他の母親に負けないくらいに。