女教師

私は彼を見つめながらうなづいた。彼も私を見つめ返す。二人の唇が重なり合った。そしてこれが最後のキスになるとは夢にも思わなかったのである。
彼は私の寝顔をずっと見つめていた。見守るように…そして、遠い遠い闇へと一人消えていった。何かを決意したように。

「依然、逃走を続けている教師殺害未遂の少年Aと人質になっている笹倉舞さん24歳ですが、B町の付近で二人の姿を目撃したとの住民の情報を受けました。警察は皆さんの目撃情報を募集しています。お心当たりの方は…。」
根岸先生はテレビに向かってリモコンの電源を向けた。そして不吉な笑みを浮かべた。

中野樹里はベッドに入って雑誌を読んでいる時だった。
窓から何やらコン、コンという音が聞こえてくる。不思議に思ってカーテンを開けるとそこには見覚えのある顔があった。
「東!?」
中野樹里は慌てて窓を開けると東を中に入れた。
「東。何度も何度も電話したんだよ。どこに行ってたのよ。でも、それより大変なことになってるじゃない。学校中大騒ぎだよ。」
「ごめんな。樹里にまで迷惑かけて…。」
「あの女のせいなの?許さないわ私、あの女だけは絶対…。」
中野樹里は憎しみを込めて言った。
「先生のせいじゃない。俺が勝手に根岸を刺して先生をさらったんだ。それにお前、あの女っていう言い方よくないぞ。一応、お前の教科担だろ。」
彼はそう微笑して優しい口調でなだめた。
「東?なんで笑っていられるの?あなた刑務所入っちゃうかもしれないんだよ?どうしてそんなに落ち着いていられるの?」