女教師

「ああ。舞だ。やっと舞に触れられた。」
 「兼山…くん。」
 「舞、俺も名前で呼んで。」
 「…ひ、東。愛してるわ。」
 激しく深くお互いの唇をむさぼる様に吸いあう。息が苦しいのなんて関係ない。このまま二人で消えてもよかった。
 
 翌日、根岸先生が病院で一命を取り留めたことを私たちはテレビの報道で知った。
 「私たち、もう戻れないね…。」
 「ああ。もう二度とな。」
 どこまでも行こう。たとえ私たちが地獄への扉を開けようとしていても二人なら平気。私はそう思っていた。
 「人間ってあんな軽く刺さるんだ。まだ感触が残ってる。刺さった瞬間の“ズブッ”っていう感触が…。」
 彼は自分の震える両手を見つめながら呟くように言った。
 「もう何も思い出さないで…。あなたは私を救ってくれたわ。そう、人間ならそうやって罪の意識にさいなまれるものだわ。たとえそれがどんな凶悪犯であろうとも…。」
 私は彼を包み込みながら根岸先生のことを考えていた。人間として人を殺したことに何の感情も抱いていないあの悪魔のような男が次にどんな罠をしかけてくるのか。私は今度は絶対に彼を守らなければならないと堅く決意していた。
 
 「では兼山という少年はあなたと笹倉舞さんという女教師が付き合っているのを知っていきなりあなたに襲いかかってきたという訳ですね。」
 病室の一角で根岸先生は二人の刑事に事情聴取を受けていた。
 「はい。私のことより笹倉先生が心配で。今もあの兼山に刃物を突きつけられていると思うとゾッとするんです…。」
 根岸先生はあることないことペラペラ喋り続けた。