女教師

彼はゆっくり確かめるように口を開いた。そしてその額には脂汗のようなものが光っていた。根岸先生の不気味な笑い声が部屋中を包み込む。私は彼の傷ついた顔を見たくなくてずっと下を向いてこらえた。
 「そうだよ。愛していたのに彼女が裏切ったんだ。だから壊した。」
 「お、俺の母さんをか…。」
 「そう兼山由美子を。」
 「ウワァーーーーーーーーー!!!」
 彼は発狂した。一瞬根岸先生を殺してしまうのではないかというほど勢いよく根岸先生の腹部目がけて突っ込んだ。するとしばらくして根岸先生のお腹の辺りからは真っ赤な鮮血がしたたり落ちていたのだった。根岸先生は何も言わずに倒れるとそのまま動かなくなった。彼は呆然と倒れた根岸先生を見つめていた。しかしその目は焦点があっていない。そしてしばらくして我に帰ると私の縛られていたロープを解いてくれた。
 「行こう。」
 彼が強引に私の手を引く。私はその手を引き払うことができなかった。警察、学校、生徒、世間、親…いろんなことを考えた。けれど今彼から離れてしまったらもう取り返しがつかなくなる。同情じゃない、愛も関係ない。今はそばにいてあげなければ…それだけはわかっていた。
 その晩、私たちは愛し合った。傷を舐めあうように…。彼の狂おしいほどの感情が私の中に流れ込んでくる。
 「先生…」
 「…もう先生じゃない、舞って呼んで。」
 「舞…愛している。」
 唇と唇が触れ合う。彼の浅く早い呼吸が喉から胸へ肌を滑ってゆく。愛されているという実感が私の胸をつらぬく。その瞬間歓喜の声が漏れた。