「……わたし」


「俺に関わるなって言っただろ」


「でも! わたしはずっと、宝珠のことがっ」



好きだよ。



続けようとした言葉が、ふっと柔らかい唇で塞がれた。



びっくりして見開いたままの目には、伏せられた宝珠のまぶたがあって。



数秒間。
不意に温かな感触が訪れた唇は、熱く湿った舌にこじ開けられた。


「っ……」



何度も変わる角度に、わたしに絡む舌。

……息が上手く吸えない。



苦しげに重なった唇の隙間から、わたしの吐息が堪らず零れた瞬間、


「キスは好きな人としかしたらダメって言うけど」



「っ……」



「俺は嫌いだよ。世界で一番千愛が嫌いだ」



わたしを解放した宝珠の唇から言い放たれた言葉は、重い痛みと一緒に胸の奥に沈んでいった。