驚いたようにしゃがみ込み、散らばったプリントをかき集める担任がぼーっと視界に映った。



なのに、わたしの瞳には担任もプリントも映らない。




「……瑠璃おばさんが……亡くなった」



「渋木?」



わたしの瞳いっぱいに、十年前いつも見ていた宝珠のお母さん、瑠璃おばさんの笑顔が浮かんでいた。




可愛らしくて、優しくて……笑顔が宝珠にそっくりな笑顔をした、宝珠のたった一人の家族だ。



いつも作ってくれた柔らかいチーズケーキが、宝珠もわたしも大好きだったのを今でも覚えてる。



「……知り合いか?」



拾い終えたプリントの束を整え、担任は呆然と立ち尽くしたままのわたしに訝しそうに問いかけた。