何度かゆっくりと瞬きをして涙を払えば、



「……あなたは」



空色のハンカチを差し出した一人の男性が小さく微笑んでいた。



スラッとした細身の体にダークグレーのスーツがよく似合っていて。

歳はお父さんと変わらないくらいに見える。


そして何故か……初めて会う筈なのにそんな気がしない。



わたしは彼が浮かべたどこか悲しげな笑みに既視感を覚えていた。



「その涙は……宝珠を心配してくれてるのかな」


「なんで宝珠のことを……」


「宝珠は私が預かってるからだよ」


「えっ……」



そっとハンカチを握らせてくれた手には、一枚の名刺が一緒に載せられていた。