母さんに俺しか居なかったように俺にも母さんしか居なかった。



生きるのを諦めてしまった大切な人を見てることしか出来なかった虚しさと悲しみと怒り。



その矛先は必然的として、母さんの心を壊した宝珠へと向けられる。



だから宝珠の愛する渋木先輩の前で心を壊してやった。


大切な人を壊した宝珠から大切なモノを壊す為に。



こうすれば俺の気持ちは少しは晴れるはず。
そう思ってたのに……。



“あんな風に人を傷付けるなんて最低だよっ”



叩かれた頬よりずっと胸が痛かった。



愛された分だけ優しい人でいて……って言われてたのに。


最後まで愛してくれてた母さんとの約束を破ってしまったから……。