「待って宝珠!!」



逃げる宝珠を捕まえて何を聞けば良いのかわからない。



さっき葦原くんが言ったこととか、葦原くんが兄さんって呼んだこととか……。



聞くべきことはたくさんあるけど。



それより今は宝珠を独りにさせたくなかった。



宝珠のあんな傷付いた顔……見たくないよ。



「宝珠っ!」



必死に捕まえた宝珠の指先は冷たくて……微かに震えてる。



それを包み込もうと手のひらを近付けようとした時だった。



「……触るな」


「えっ」


「……俺に触るなっ」



振り払われた手が虚しく宙で止まり、振り向いた宝珠の眼差しが不安定に揺れていた。